No | 120447 | |
著者(漢字) | 望月,哲史 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | モチヅキ,サトシ | |
標題(和) | Jacobi多様体に付随するMilnorΚ群のmotif論的解釈 | |
標題(洋) | Motivic interpretation of Milnor Κ-groups attached to Jacobian varieties | |
報告番号 | 120447 | |
報告番号 | 甲20447 | |
学位授与日 | 2005.03.24 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数理第259号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | 数理科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | [Som90]では、加藤和也氏が定義した基礎体k上の半abel多様体G1,G2,...,Gγに付随するMilnorK群K(k,G1,...Gr)が研究されている。本論文では、[Som90]で染川氏によって提案されたK(k,G1,...Gr)のmotif論的解釈について考察している。つまり 予想 1.(染川予想) G1,...,Grを基礎体k上の半abel多様体とすると、K(k,G1,...,Gr)は と同型であろうか?ここに、Mkは体k上の然るべきmotifの圏である。 本論文では,MkとしてVoevodsky氏が[TriCa]に於いて構成した、k上の幾何的motifの圏DMgm(k)を採用して、半abel多様体としてJacobi多様体を考えた時の上の予想に挑んでいる。そこで、本論文第4章ではまず、点付きの滑らかな曲線(C1,x1),...,(Cr,xr)に付随するmotivic複体Z(〓(Ci,xi)を考察した。これは(C1,x1)=...=(Cr,xr)=(Gm,1)の時は、Voevodsky氏のmotivic複体Z(r)と一致する。Z(r)の場合の上記予想は、[BKcon]で、証明されている。本論文第5章では次を証明した。 主定理 2.(jacobi多様体の染川予想[MotIn]Theorem 5.31) kは特異点解消を許す完全体とする。(C1,x1),...,(Cr,xr)をk上の射影的な滑らかな点付き曲線とする。この時、次の同型が成立する。 主定理の左辺の群は、基礎体kが完全体の時、[CohTh]を用いると、Z(〓(Ci,xi))のSpeckへの制限のcohomology群として記述出来て、生成元と関係式で表す事が出来る。両者の群の関係式を比較する際に証明の要となるのは、次の定理である。 定理3.(Moif論的相互律[MotIn] Theorem 5.18) Kを基礎体k上の代数関数体とすると、次の合成はPro-DMgm(k)に於いて零射である。 この定理は、CをKを関数体に持つ非特異射影的曲線とする時、次の可換性に帰着される。 この図式の可換性は、第3章で展開されたmotif間の様々な射の両立性に関する一般論の帰結である。 又、motif論的相互律は、基礎体が完全体の時は、[Sus82]のMilnorK群のWeil相互律の一般化になっている事も示した。([MotIn] Corollary5.25) 謝辞 本論文を書くにあったって、斎藤毅先生、斎藤秀司先生、加藤和也先生、山崎隆夫先生、木村健一郎先生に有益な助言を戴いた事を感謝致します。 | |
審査要旨 | kを体とし,G1,...,Grをk上の準アーベル多様体とする.このとき,MilnorK群の一般化として,可換群K(k,G1,...,Gr)が定義されている.G1,...,Grがすべて乗法群Gmであるときには,これはMilnorK群K〓(k)と一致する.たとえば,kが局所体で,Cがk上の代数曲線のときには,J(C)をCのヤコビ多様体とすると,群K(k,Gm,J(C))はCの類体論との関係でよく調べられている. 最近Voevodskyらにより,モチーフの圏が構成されているが,群K(k,G1,...,Gr)は次のようなモチーフ論的解釈をもつと予想されている:準アーベル多様体Gに対し,それが定めるk上の混合モチーフの圏Mkの対象も同じ記号Gで表わす. 予想1 標準同型ExtMk(Z,G1[-1]〓…〓Gr[-1])→K(k,G1,...,Gr)が存在する.G1,...,Grがすべて乗法群Gmであるときには,標準同型HTM(k,Z(r))→KMr(k)が知られており,予想1は,これの一般化と考えられる.本論文の主結果は,予想1の部分的な解決である. 定理2 予想1は,G1,...,Grがk上のスムーズ射影代数曲線C1,...,Crのヤコビ多様体ならば正しい. 以下G1,...,Grが,k上のスムーズ射影代数曲線C1,...,Crのヤコビ多様体であるとする.標準同型ExtMk(Z,G1[-1]〓…〓Gr[-1])→K(k,G1,...,Gr)の構成の概要は次のとおりである.Voevodskyの構成したモチーフの圏では,モチーフはある種の層の複体として定義される.この構成により,群ExtMk(Z,G1[-1]〓…〓Gr[-1])はテンソル積G1(k)〓…〓Gr(k)の商群として表わされる.この表示と,群K(k,G1,...,Gr)の定義より,標準写像G1(k)〓…〓Gr(k)→K(k,G1,...,Gr)は,標準射ExtMk(Z,G1[-1]〓…〓Gr[-1])→K(k,G1,...,Gr)をひきおこす. この射が同型であることの証明は,逆写像を構成することによってなされる,群K(k,G1,...,Gr)の定義より,逆写像を構成するためには,群ExtMk(Z,G1[-1]〓…〓Gr,[-1])について,ある種の相互法則がなりたつことを示せば十分である.この相互法則は,モチーフの平坦射に対するひきもどし射と、正則埋め込みに対するGysin射の両立性から従う. 以上のように,本論文では,アーベル多様体にともなうMilnorK群の類似について,それらがヤコビ多様体の場合にモチーフ論的解釈をもつことを示している.よって論文提出者望月哲史は博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める. | |
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