No | 120752 | |
著者(漢字) | 張,娜 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | チョウ,ナ | |
標題(和) | ファイナンスにおける数学モデル及び近似計算の研究 | |
標題(洋) | Mathematical Models in Finance and Approximate Calculation | |
報告番号 | 120752 | |
報告番号 | 甲20752 | |
学位授与日 | 2005.09.30 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数理第272号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | 数理科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | Optionとは 所有者に特定の資産を決められた時間と価額で売買する権利を与えるものである。満期にしか行使できないoptionはEuropean option、満期までの任意の時刻に行使できるのはAmerican option、また満期まで決められたいくつかの時刻に行使できるのはBermudaoptionと呼ばれる。 American optionの価格に対して、特別の場合を除き、解析解が知られていないので、数値計算を用いなければならない。数値計算法は主に三種類ある: 1. Analytical approximation; 2. Stochastical simulation method; 3. Numerical solution of Black-Scholes equation subject to boundary conditions. この論文では、Bermuda Optionの価格問題を解決する新しい方法を紹介する。この方法の基本的ideaはLeast Square Monte Carlo方法でvn(X(Tn))-E[vn(X(Tn))|FTn-1]をマルチンゲールとして近似する、この結果をRogersの近似方法Optimization Martingale methodに応用し、Bernuda optionの価格のupper boundが与える。以下に数学モデルを紹介する。 〓はブラウニアンフィルトレションとし、フイルタ付き確率空間〓考える。〓、uはW上Wiener測度で、 〓はこの空間で定義したd次元Ft-Brownian運動、 B0(t)= t, Vo,Vl,… ,Vd 〓とし、 Underlying process x(t;s,x)は次の確率微分方程式を満たしていると仮定する。 このStratonovich方程式に対応するIto型方程式は であるとする。X(h)(t),k=0,l,・・・,Kn, n=0,l,・・・,N-1がx(t;0,x0)をEuler-丸山法で近似した確率過程で、以下で与えられたものである。 cb(RD)上のoperator PtをPtf(x)=E[F(0;0,x))で定義する。N≧2は整数とする。行使時刻がTn,n=0,1,・・・,N,であるBermuda type derivativeを考える {Tn,Tn+1,・・・,Tnに値を取るFt-停止時刻の集合をSn,n=0,1,・・・,Nとする。そして、このBermuda optionのvalue functionsは次のように与えられる。 〓とする、確率空間〓では、独立なBrownian運動が取れる。まず確率変数〓、を〓、により定義すると、これらは独立なWiener過程となる。さらに、これらのWiener過程に用い、各nに対して、 Euler-丸山法で次のように、 Ln個sample path Xn,l(m,k),k=0,・・・,Km,m =0,1,・・・,N-1,l=0,1,・・・,Lnを発生させる。 ただし、h > 0,Km=(Tm+l-Tm)/hである。次にsample pathを使って、Bermuda optionのvalue functionを近似する。uN(x)=VN(x)は既にあたえている。uN(x),・・・,un+1(x)は既に求められていると仮定して、〓は次の2次関数の最小点であると仮定する。 〓と帰納的に定義する。〓の近似と見なせる。この論文の主要的な結論は以下である。 定理1.1=1,2,・・・,L,n=0,1,・・・,Nに対し、 とおく。〓 としておく〓 hに依らない定数Cがあって、つぎの不等式が成立する。 さらに、この論文が次の内容も含めている。第3章では、この計算方法を使って近似数値計算のアルゴリズムを紹介した後、一つの証券を原資産とするBermuda optionに関する数値計算の例を与えた。第4章では、2次元Gaussian分布 〓での分布を多項式で近似計算する公式を与え、誤差も評価した。第5章では、企業の規模分布がPareto分布に従うと言う経験的事実を理論的に説明する確率モデルを与え、佐藤のアイデアに従って、厳密にこの事実を証明した。 | |
審査要旨 | 本論文ではバミューダデリバティブの価格をモンテカルロ法で計算する新しい計算法を考案し、その真の値との誤差の数学的評価を与えている。 今、 W=C([0,∞);Rd), β(W)はボレル代数、uは(W,β(W))上のウィナー測度、{Ft}t∈[0,∞)は自然なフィルトレーションとする。〓は滑らかな関数、X(t:s,x),t≧s≧0,x∈RDは確率微分方程式 の解とする。 Ptf(x)=Eu[f(X(t;0,x))]により線形作用素Pt,t≧0,を定める。 T0,T1・・・,TNは 0=T0 とおく。バミューダデリバティブの価格を求めることは、数学的には、与えられたx0∈RDに対してv0(x0)を求めることである。値関数vnは以下のように帰納的に与えられる。しかし、Dが大きい場合は関数を記憶することは困難であるため、モンテカルロ法による解法の研究が従来よりなされていた。その一つに、モンテカルロ法を使って最小自乗法で値関数を関数系の線形和で近似し、最適停止時刻T0の形を推測し、その推定停止時刻T0に対して、 Eu[g(T0,X(T0;0,x0))]を再びモンテカルロ法で計算し、u0(x0)を推測するという方法がある。この方法は原理的にはv0(x0)の下限を与えるものである。一方、Rogersは という事実を用いてv0(x0)を推定するという方法を考えた。この方法ではv0(x0)の上限が与えられる。この方法を用いるには、最適なマルチンゲールMtをどのように推定するかという問題が起こるが、Rogersは例のみを与え、一般的な方法は与えなかった。 本論文では、モンテカルロ法と最小自乗法を用いてMtを求める方法を提案し、その有効性を数学的に調べたものである。その数学的定式化を以下に述べる。 Ω=W{0,1・・・,N}×NP={0,1,・・・,N}×N, Zkl:[0,∞)×Ω→Rd,k=0,1,・・・,N,l=1,2,…,をZk,l(t,{wm,n})=Wk,l(t)で定める。hは1/hが自然数となる正数とする。X(h)k,l:[0,∞)XΩ→RDを t∈(nh,(n+1)h],n=0,l,・・・,により帰納的に定義する。これはオイラー・九山近似である。 関数系〓,r:RD→R,n=1,・・・,N,r=1,・・・,Rn,〓n,q:[Tn-1,Tn]×RD→Rd,n=1,・・・,N,q=1,・・・,Qn,およびLn∈N,n=0,1,・・・;N,が与えられたものとする。Kn=Tn-Tn-1)/h,n=1,・・・,N,とおく。uN=q(TN,")と定義し、un:RxΩ→Rが与えられたとき、 とおき、{an,r}r=l,・・・,Rn'{bn,q}q=1,・・・,QnはFn({an,r},{bn,q})の最小点とし とおく。このようにして、un,{an,r}r=1,・・・,Rn,{bn,q}q=1,・・・Qn,を帰納的に定義していく。最後に、 l=1,・・・,L0,とおく。論文では以下のことが証明されている。 定理 Kn,i,n=1,・・・,N,i=0,1,をとおく。ただし、 〓である。 この時、 (UFG)条件の下で、定数C>0が存在し、 が成立する。 この定理により、PTvnやViPTVrを線形和でよく近似できるような関数系を選ぶことができれば、hを十分小さくとりLn,n=0,1,・・・,Nを十分大きくとれば、v0(x0)をRogersの方法に沿って十分近似できることがわかる。 論文では数値実験結果も示されている。さらに、良い関数系をどう与えるべきかも論文では調べられている。 また、論文では会社のサイズの成長モデルについても論じている。 このように本論文ではバミューダデリバティブの価格計算について新しい方法を打ち出し、一般の場合に適用できるアルゴリズムを与えることに成功しており、高く評価できるものである。 よって、論文提出者張郷は、博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい十分な資格があると認める。 | |
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