No | 121569 | |
著者(漢字) | 横山,知郎 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ヨコヤマ,トモオ | |
標題(和) | 各葉の基本群が同型な余次元一極小葉層構造 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 121569 | |
報告番号 | 甲21569 | |
学位授与日 | 2006.03.23 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数第291号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | 数理科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | この論文の目的は,余次元一葉層構造がholonomyを持たないための十分条件を求めることである.今までに,いくつかの十分条件が,MoussuとRoussarie[MR],Plante[Pl],Blanc[Bl]によって,与えられている.他方,余次元一葉層構造がholonomyを持たないための必要条件は,たくさん知られている.特に,Sackstederが以下のことを示している. Proposition 1.[Sa] compact多様体上の余次元一横断的に向き付け可能なC2級葉層構造がholonomyを持たないならば,全ての葉は互いに同相である. そこで,我々は,自然に次の問いを持つ. compact多様体上の葉層構造が互いに同相な葉を持つならば,その葉層構造はholonomyを持たないか? この主張は正しくない.しかし以下のような事が,GoodmanとPlanteによって示されている. Proposition 2.[GP] 多様体上の余次元一横断的に向き付け可能なC2級極小葉層構造の全ての葉の一次のcompact supported cohomologyが非自明で有限生成であるならば,その葉層構造はholonomyを持たない. ここで,葉層構造が極小であるとは,各葉がdenseであることである. また,Blancによって,次が示された. Proposition 3.[Bl] compact空間上の横断的に向き付け可能なC2級極小葉層構造の各葉がendを二つ持つならば,その葉層構造はholonomyを持たない. ここで,これらの主張にある葉層構造は,極小であること注意しておく.また,いくつかのendの性質を述べる. Duminyの出版されていない結果によって,次が示されている. Proposition 4.compact多様体上の余次元一横断的に向き付け可能なC2級葉層構造の例外的な局所極小集合上のsemiproperな葉は,Cantor集合と同相なendを持つ. ここで,Xが例外的局所極小集合とは,ある開saturationU上で極小集合であり,XがUでも真葉でもないものである. さらに,Ghysによって,次のことが示されている: Proposition 5.compact空間上のC3級葉層構造に関する任意のhar-monic measure μ,について,μ-a.e.なsatnrationがあって,次のうちひとつを満たす: 0)全てのendが0個である. 1)全てのendが1個である. 2)全てのendが2個である. 3)全てのendがCantor集合と同相である. また,CantwellとConlon[CC3]によって,次が示されている. Proposition 6.閉多様体上の余次元一横断的に向き付け可能なC2級葉層構造において,次の性質のうちの一つを満たすresidual集合がある. 0)全てのendが0個である. 1)全てのendが1個である. 2)全てのendが2個である. 3)全てのendがCantor集合と同相である. 注意として,endがない葉はcompactである.また,C2級葉層構造の各葉のendが一つならば,その葉層が極小であることが導かれる.これによって,C2級葉層構造の場合には,次のような問題に帰着される. Problem 1.閉多様体上の余次元一横断的に向き付け可能な極小葉層構造の全ての葉がendを一つ持ちかつ同相であるならば,その葉層構造はholonomyを持たないか? しかし,この問題に対して,各葉がS1×Rk(k〓2)の場合についても,わかっていなかった.そこで,これの答えとして,我々は次の主張を示した. Theorem 1.多様体上の余次元一横断的に向き付け可能な横断的に実解析的極小葉層構造の各葉の基本群がZと同型であるならば,その葉層構造はホロノミーを持たない. さらに,compact多様体上の葉層構造についてに考える.上で述べたDuminyの定理より,Fは例外葉を持たないので,.葉はcompactかdenseである.よって,次のcorollaryを得る. Corollary 1.Fをcompact多様体M上の余次元一横断的に実解析的な葉層構造とする.各葉が互いに同相であり,葉のendがCantor集合と同相でなく,葉の基本群がZと同型ならば,Fはholonomyを持たない. また,問題1の部分的な答えとして,以下を得た. Theorem 2.多様体上の余次元一横断的に向き付け可能な横断的に実解析的極小葉層構造の各葉の基本群がZkと同型であり,かつ多様体の二次のホモトピーが自明ならば,その葉層構造はholonomyを持たない. 最後に,最初の問いについて,考察した.今のところ問いに対する反例は,以下を満たしてる: 0)各葉の基本群は指数的増大度を持つ. 1)各葉は,Cantor集合と同相なendを持つ. そこで,以下のような問題が提起される. Problem 2. compact多様体上の葉層構造が互いに同相な葉を持ち,かつその葉の基本群が指数増大度を持たないならば,その葉層構造はholonomyを持たないか? 今のところ,これに対する一般的な解はない.しかし,次のようなことはわかっている: Corollary 2. Fを,多様体M上の余次元一横断的に向き付け可能な極小C0級葉層構造とする.Fがvanishing cyclesを持たないとする..各葉の基本群が同型であり,かつ正確に多項式増大度を持っているとならば,Fはholonomyを持たない. | |
審査要旨 | 余次元1葉層構造の葉のトポロジーと多様体のトポロジーの関係については長い研究の歴史がある。 各葉の基本群から実数直線の原点を固定する微分同相の芽のなす群へのホロノミー準同型が定義される。閉多様体上の葉層構造に対し、すべての葉に対してこの準同型が自明ならば、多様体は円周上のファイバー束であり、各葉は互いに同相で、ファイバーの被覆空間となることがサックステーダーにより知られている。このとき、各葉は多項式増大度をもち、C2級ならば、すべての葉は調密、すなわち極小葉層となる。 論文提出者横山知郎はどのような条件のもとで、すべての葉のホロノミー準同型が自明となるかを研究した。論文の主要な結果は3つある。 閉多様体上の葉層構造に対し、すべての葉が同相とするとき、葉層構造は上記のホロノミー準同型が自明なものとなるかという問題に対し、横断的に実解析的な極小葉層の反例を与えている。この例の場合、葉は種数が無限大でエンド集合がカントール集合となる。 閉とは限らない多様体上の横断的に向き付け可能な実解析的極小葉層に対して、すべての葉の基本群が無限巡回群のとき、各葉のホロノミー準同型は自明となる。 閉とは限らない2次元ホモトピー群が自明であるような多様体上の横断的に向き付け可能な実解析的極小葉層に対して、すべての葉の基本群が同じランクの自由アーベル群のとき、各葉のホロノミー準同型は自明となる。 これまでの研究で、C2級で各葉が多項式増大度をもち、ホロノミー群がアーベル群となる場合などで同様のことが知られていた。しかしながら、極小性、実解析性は仮定するが、葉の幾何的な条件ではなく基本群に関する条件だけで、各葉のホロノミー準同型は自明となることを示した意義は大きい。 また、閉多様体上の葉層構造の葉のエンド集合は、すべての葉が同相ならば、空集合、1点、2点、またはカントール集合となることが、ジース、キヤントウェルーコンロンにより示されている。このとき、空集合は容易に、2点の場合は最近のブランの結果により各葉のホロノミー準同型は自明となる。上に述べたように、カントール集合となる場合には反例があるが、1点の場合の解析において、論文提出者の結果は非常に意義があるものである。 このように、論文提出者の結果は余次元1葉層構造のトポロジーの研究に重要な意味を持つものである。よって論文提出者横山知郎は、博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める。 | |
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